あまご釣り・・・その4・・・


雨が続いている。桜も5分咲きのまま、冷たい雨に打たれている。今年のあまご釣りは一体どうしちゃったのかなぁ・・・3月は4日以来、さっぱり釣りに身が入らぬ日が続いている。四十九日か・・・

何もかもが中途半端なまま、眼前に横たわっている感じだ。どれか一つをキチンと片付けることから全てがまた回り始める事は判っているのに、それが出来ずに居る。

こんなことって誰にでもあることなんだろうけど、ある種のスランプなんだろうか?なるようになるさと思ってほったらかしている自分が心地よいから、ますます、何もしない日が明日も、明後日も続くのだろうか。

幼い日の夏休み。早朝、家族の皆がまだ夢を見ている頃に一人起き上がって、隣町の森に向かって自転車をこいだ。ある銀行のグラウンドの外れにクヌギ林があった。

北からの下り斜面にある身長の4倍ほどのフェンスをよじ登る。フェンスは針金で編んであり、丁度子供の運動靴が入るくらいの横長い菱形の目を持っている。菱形の目を何回か靴の先に引っ掛けて、登って一番上まで行き、今度は後ろ向きにフェンスを下って林に入ると朝露に濡れた笹が一面に生い茂っている。

半ズボンがビショビショになるほどの露だ。朝もやにけぶった林の奥に目当てのクヌギの大木がそびえていた。そぉ〜っと、木に近づくと、木の幹から樹液が垂れているところがある。いたっ!

若い元気なカブトムシが2匹ほど、幹の周りを羽音もたけだけしく飛んでいる。幹に目を凝らせば、そこにも大きな黒いカブトムシが真剣に樹液を吸っている。蜂もいれば、クワガタもいる!蛾や蝶も樹液に群がっていた。

頭の中が真っ白になる一瞬の後,これ幸いと、飛んでいるやつを捕まえた。元気が良いから、捕まえても自分の手や指にしがみついて、なかなか剥がせない。それでも、何とか剥がして、持ってきたボール箱に放り込む。幹にしがみついている大きな黒いカブトムシも。

今考えると、何を慌てていたのか・・・一目散で、笹原で足を切りながらフェンスに向かって走ってよじ登り、自転車に飛び乗った。死に物狂いで、隣町を後にして家に駆け戻った。

今にして思えば、カブトムシを捕まえることって、まるで、今のあまご釣りと同じだ。前もって目星をつけた場所に誰よりも早く行って、獲物を捕まえる。誰かに先を越されたら、もうだめだ。カブトムシを捕まえた時の気分と言ったら、丸であまごが釣れた時のものと寸分たがわぬ。

あまご釣りってこれだったんだ!と最近になってやっと、その興奮の理由がわかった。とても本能的な欲求だったんだと。 

そういえば、タラの芽取りも類似の行為であるような気がする。自分が欲しいものを誰よりも先に手にしたい。原始の欲求とその解消がそこにあった。 


<10歳頃の銀次郎>


 

   
 

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