-食べ物そして音楽(1)- 17号フリーウエイへVWゴルフGTIを乗り入れたのは、5時半をとうに過ぎていた。17号線は、サンノゼからサンタクルーズへ抜ける山道で、アメリカのフリーウエイには珍しく、幅が狭く、アップダウンが厳しく、タイトコーナが連続する。ラリーストだったSは、4000回転をキープしながら軽快にコーナーをトレースする。 30分も走ると彼方にサマータイムの太平洋が広い畑越しに青く輝いていた。第2次大戦前から日本人農民が多い地域で、強制収容所へ送られながらけなげに農業を営んでいた。あちこちに噴水が派手に水を撒き、アーティーチョーク(朝鮮アザミ)やらストロベリーが健康そのものに育っている。このあたりから東へ僅か入った小さな町サリナスでスタインベックが生まれ育ったと、司馬遼太郎の”アメリカ雑描”に書かれている。結果的に日本人を迫害することになった閉鎖的な団体にスタインベックも加盟していたそうだ。 海岸沿いの丘陵の一番高い所からモンタレー湾が美しい弓を描き、弓に添って白い波が立つほど風が強い。サンドシティを過ぎ、このまま南下すれば5分で年配の金持ちが住むカーメルの町。アメリカ人は、現役を退くとカーメルや南のサンタモニカに住みたがる人が多いが、物価は高く、土産物など、同じ物でもロサンゼルスの倍はする。 シーフードレストラン、ロスティは土曜の夕方で賑わっていた。ワイングラスが軽く当たる音、笑い声、日本人には無い歯裂音がカオスのようなノイズとなって潮騒のようだ。季節は7月時は夕暮れ。窓越しに干潟を中型の渡り鳥が低く飛ぶ。古ぼけた柱に赤く差す夕日。ハムの様な太股をショートパンツからデーンと放り出した、そばかすだらけの顔に丸い眼鏡を掛けたおばさんとそれに暑苦しくしがみつく10歳位の悪餓鬼。親父はとっくに飽き飽きした顔しながらも、海を見る視線をやわらかく妻子に投げる様は、男の美学が極まった!! 蟹気狂いのSは、スノークラブを注文、牡蠣気狂いの俺は何処へいっても、牡蠣だ。Sの蟹を盗んでみると、これがまずいではないか?スノークラブは日本の北陸では越前蟹、城崎、香住あたりではズワイ蟹、松江辺りでは松葉蟹と呼ばれる蟹の大型版。うまいはずなのに、まるっきり日本の蟹の味がしない。大体、アメリカ人の蟹、海老に関するセンスはゼロだ。 それに比べりゃ、生牡蠣は流石のアメリカ人も調味しようが無いではないか?せいぜい、横にホースラディッシュを付け合せる程度の話。
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